2012年1月16日月曜日

福岡 インテリアショップ ニック (NIC)

ARTing 第8号 掲載予定  一九六六年から一九九九年までの三十三年間(福ビル撤退は一九九七年)、ニックは福岡市の天神にあって総合インテリア・ショップとして全国の脚光を浴びていたそこに並ぶ品々は、コーヒーカップからイス、テーブル、カーテンまで選りすぐりの一流品ばかり。世界の最新デザインにふれることのできる贅沢な店であった。デザインについての詳しい知識がなくとも、ぶらりとまわるだけでも心が豊かになったものだ。若者はそこでハイレベルなデートも楽しんだ。ニックのショッピング・バックを手に天神を闊歩することや、ニックの包みの贈り物をすることや、それどころかニックを話題にすることさえもが知的ステータスであった。 戦後の荒廃期から高度成長へと離陸し日本人の生活全体が潤ってくる時代において、ニックは新しい生活空間のスタイルを提供する企業として誕生したが、それはまた西日本地域のデザイン界全体を巻き込む大きなデザイン運動でもあった。そしてその目覚ましい活動は福岡の文化的センスの向上にも少なからず貢献することになった。・・・・だが不思議なことに今までその全体像がきちんとまとめられたことがなかった。・・・・・ そこにどんなデザインの思想(あるいは哲学)があったのか? 3.11という震災後の社会であるからこそ、その読み直しが求められている。・・・ (武田)